---必ず早めに商標や特許の調査をしましょう!---
あまり気の利いた表現ではありませんが、新しい企画を考えておられる方々や、いずれ企画される可能性がある方々に意識していただきたいことをストレートに表そうという趣旨で、上記のようなタイトル・副題を設定しました。
なお、「新規の企画」には「開業」も含まれます。開業の準備をされている方も、是非、以下をご一読下さい。
新しい商品やサービスを世に出すにあたり、知的財産についての検討も必要であると承知されている方は多いと思いますが、どうも、その検討は、商品やサービスの内容がほぼ定まってからになり、検討の対象も特許や商標登録の申請をすることに限られることが多いと感じます(あくまでも私の乏しい経験による推測ですが・・・)。
勿論、大事な知的財産を守るために特許や商標登録の申請をする必要は大いにありますが、
申請の手続きより前に意識すべきこと、早い段階から取り組む必要があることがあります。
それが調査です。
この必要性を意識していないと、将来、やっかいな問題が発生する可能性があります。
たとえば、商標の場合、企画を詰めてゆく過程で商品やサービスの名称やロゴマークのデザインを検討することが多いでしょうが、それらをなんの調査もしないで決定してしまうと、登録が困難な商標(拒絶理由が通知され、その解消に時間がかかる。)を選択してしまうおそれがあります。
他社の登録商標に非常に近い商標を選択してしまうと、登録は一段と難しくなる(拒絶理由を解消できない可能性が高まる。)うえに、実際に商標が付される商品の種類によっては、相手方から、「商品の混同が生じており、当方の商標権を侵害している!」という指摘を受ける可能性も生じてしまいます。
商標は、殆どの分野の事業者に関係がある知的財産です。
特に、新しい事業を計画されているときは、名称やロゴマークを検討されるケースが非常に多いと思われます。その検討の際には、名称やロゴマークを決めてしまう前に調査を行い、登録の可能性が高いと思われるものを選択する・・という意識を持って下さい。
特許に関しても、
すでに特許された発明や特許出願中の発明(特許される可能性があるもの)の中に、開発中の商品・技術に近いものがないか・・・という観点から調査をする必要があります。
特に、類似する先行の商品がある場合や、シンプルなものだが世の中にまだ出ていないと思われるものを企画している場合には、調査は必ずしていただきたいと思います。
類似する先行の商品やソフトウェア技術が絡む類似のサービスがある場合には、言わずもがな、その先行の企業が特許等の権利を取得または出願をしている可能性がありますので、最低限、それを確認する必要があります。
先行の企業の権利や出願が見つからなかった場合でも、その企業の関係者(個人)や他の企業の名義の特許や特許出願が存在する可能性がありますので、権利者や出願人の条件を外して調べることをお勧めします。
仕組みや形態が簡単なものは、ヒットした場合に模倣される可能性が高いので、防衛目的にとどまるとしても特許の申請(出願)を検討すべきです。
そのときに邪魔になるのが、「この程度のものが特許になるはずはない!」という思い込みです。
簡単なものであっても近いアイデアが世に出ているという事実が認められない限り、特許を受けられないとは言い切れません。
特許の審査で新規性や進歩性がないと判断するには、その根拠となる先行技術を示さなければなりません。このことをふまえ、調査で新規性や進歩性がないことを示す先行技術を見つけることができなかった場合は、「特許を受けられる可能性があるかもしれない」と考えても良いと思います。
一方、類似のアイデアが見つかった場合には、同様のアイデアを出願しても特許を受けられる可能性は殆どないと思われるので、出願する意義はないと思います。
類似のアイデアがすでに出願されていることに早い段階で気づけば、特許申請をしたいと考えていたとしても、 諦めて他の方法による保護を検討するか、特許申請が可能なレベルになるように企画を練り直すことができます。
類似のアイデアで特許を受けているもの、特許される可能性があるもの(特許庁に係属中の出願)が見つかった場合には、 その権利を侵害することがないよう、仕様の見直しをすることができます。
特許の検索では、たいてい多数の特許文献が抽出され、それらの内容を1点ずつチェックする作業に多大な時間がかかります。重要度が高いのに検索の条件にあてはまらずに抽出できない文献やまだ公開されていない出願が存在する可能性もあるので、どれだけ念入りにチェックしても、完璧な結果が得られたと言いきれません。
かくのごとく、特許の調査には”どこまでやっても完璧と言えない・・という頭の痛い問題がありますが、それでも、全く調査をしない、あるいはたまたま知った1~2件の特許との比較だけで計画を進めても大丈夫、と判断するのは非常に危険です。
個別の事情に応じて「これだけは確認する必要がある・・」と言える条件をもって検索をかけ、調査の対象分野にマッチする内容の文献を抽出することができれば、かなり信頼度の高い調査結果を得ることができ、侵害等のリスクを減らすこともできると思います。
煩雑になるのを避けるため、重要度が高い特許と商標の調査についてのみ述べましたが、 企画の内容によっては意匠の調査をする必要もあります。
また、 特許の調査は、たいていは実用新案まで対象に含めて行います。実用新案の登録公報は、特許の出願公開公報と同様に、類似のアイデアを示す先行技術文献として機能するからです。実用新案権は無審査で登録され、権利行使にも制約のある権利ですが、それを理由に実用新案権なら抵触しても構わないと考えるわけにはゆかず、類似のアイデアで実用新案登録を受けているものが見つかったときは、その内容を精査する必要があります。
いずれの調査も、早い段階で行うことによって、計画をそのまま進めて良いか、軌道修正が必要かなどの判断をしやすくなり、他者の権利を侵害してしまう可能性を低くすることができると思います。
どうか、知的財産についても抜かりなく検討できた企画をたて、成功を目指して下さい。
特許庁の検索サイト(J-Platpat) *は誰でもアクセスできて、自由に検索をすることができますが、本格的な調査をするには、特許,商標等の制度や検索手法に関する知識と実務経験が必要です。
特許について確度の高い調査をするためには、 特許分類を使用するのが望ましいです。
件数の絞り込みのためにフリーワードを入れる場合も、 どの項目を選択してどのようなワードを入れるかの検討をする必要があります。
検索で抽出された個々の文献(特許、実用新案等の公報)の内容が調査対象に関係あるかどうかを判断する作業も必要です。
商標の検索も、使用される予定の商標の表記だけでなく、 商標から生じる読み(称呼)を入れて 類似レベルまでの検索をする必要があります。商標を使用する予定の商品やサービスに検索の範囲を絞り込むために、 類似群コードと呼ばれる分類コードを特定する必要もあります。
*J-Platpatは、正確には、独立行政法人工業所有権情報・研修館により運営されています。
調査が必要であることや重要性はわかるが、
本格的な調査をする力や時間的余裕はないし、外部に委託するために多額の費用を投じる余裕もない・・・
検索の結果をどのように判断したら良いかわからない・・・
というようなお困りごとがある場合には、いちど弊社に相談してみてください。
株式会社知財アシスト
代表取締役 小石川 由紀乃 (弁理士)