「書く」を楽しむ。

 CMSというシステムをご存じでしょうか?

 Content Management Systemという、ウェブサイト制作用のソフトウェアシステムの略称です。

 ウェブサイトを記述するための言語(html、css)の知識がなくとも、CMSのユーザーフレンドリーなインタフェースを利用すれば、高いデザイン性を持つサイトを簡単に制作することができます。最近は、たくさんのCMSサービスが登場しており、無料で利用できるサービスも増えているようです。

 

 実は、弊社のこのサイトも、クラウド型のCMSを利用して制作したものです。

 以前、簡単なエディタ用のソフトウェアでhtmlやcssのコードを手打ちしてサイトを作成したことがあり、そのときの苦労に懲りた(笑)ことや、記事の内容に注力を注ごうという方針から、CMSを選択しました。

 ところが、とある事情から、CMSを利用せずに新規のWebサイトを作成することになりました。最初は高機能の編集用ソフトウェアを購入するつもりだったのですが、目的に見合うものが見つからず、やむなく、自力でコードを組み立てることにしました。

 

 本を読むことで基本的な仕組みを思い出しながら新しい情報を仕入れたり、いくつかのテンプレートを入手したものの、実際に作業を開始すると、なかなか思う通りにゆかず、エラー続出。

スマホ対応のためのレスポンシブデザインや、いまはやりの機能ボタンの設定にも四苦八苦しました。

 

 そんな私を助けてくれたのが、ネット検索で見つけた懇切丁寧な解説サイト。中でも、実際のコードの開示やデモストレーションをして下さっているサイトの情報は大変ありがたく、これらで開示されていたコードを自分用にアレンジすることで、なんとか完成間近まで作業を進めることができました。

  

 コードの組立には、マイクロソフトが無償で提供している Expression Web 4 というソフトウェアを利用しましたが、このソフトの使用方法についても、ネット検索で見つけた詳細解説記事に大いに助けられました。

 

 これらの解説記事の書き手は、Webデザイナーなどの専門家やセミプロ的な方々らしく、こんなのお茶の子さいさい、といったところかもしれませんが、一般的な情報だけでなく、その方ならではの工夫があると思われるコードを惜しげもなく公開し、どうぞ利用して下さい、ご意見を下さい、というスタンスでの発信が多く見受けられました。中にはコードのコピペ用のボタンコードファイルのダウンロードボタンまで付いている、初心者にとって神対応のサイトもありました。

 図解も豊富で本を出せるほどの情報をまとめあげて世の中に出すエネルギーは半端ないものと思います。心よりの敬意を表し、助けていただいたことに感謝します。

 

 ウェブサイトの分野に限らず、仕事・プライベートを問わず、これまでにも疑問や困りごとが生じたとき、ネット検索で見つけた貴重な情報に助けられることがたくさんありました。

 もちろんネットの情報は玉石混淆でガセネタ記事や事実誤認が含まれている可能性もあり、鵜呑みにしないように注意する必要はありますが、その種のニオイが感じられない、誠意あふれた解説記事に出会うたび、これだけの内容をまとめるまでにかけたであろう労力を思い、情報を提供して下さった心意気に感謝しながら、「ありがとう、助かりました。」と、自然につぶやいていました。 

 実名を公開されず、ビジネスの集客の目的があるようにも見えないサイトが結構あります。アフィリエイトの目的で書かれたように感じられるサイトもありはしますが、構成も記事の内容もとても充実しており、大したものだと感じます。

 

 こういったサイトを立ち上げた目的は人それぞれ異なるでしょうが、ひとつ共通するものが根底にあるように思います。

 それは、自分の知見をもってオリジナルの発信をしたい、というような自己実現の欲求です。

 小説の書き手、絵画などの芸術の創作者と同じように、「これ書きたい」という気持ちに突き動かされてウェブでの発信を始められた方が、結構おられるのではないかと思います。

 


 思い返すと、私がはじめてサイトを作成した動機もそうだったのかもしれません。

 無手勝流の受験勉強で奇跡的に試験に合格し、弁理士の資格を得て2~3年ほど経過した頃でした。当時は勤め人でしたし、たいした専門知識を持ち合わせているわけでもなく、決まった顧客以外に外部の人と会うこともなく、資格を取得する前とたいして変わらない日々を送っていたのですが、

 なにかしら自分に出来ることをしたい、自分を変えてゆきたい、という気持ちを持つようになり、

 これならば自分にも出来る・・・と、特許検索サイトを利用するのに必要な情報を解説するサイトを立ち上げました。 

小石川由紀乃が作成したサイトのトップバナー
小石川由紀乃が作成したサイトのトップバナー

 

 特許の制度に詳しくない一般の方々を読者に想定して、できるだけ簡潔にと一所懸命に記事をまとめ、図解用の画像を作成し、前述したごとく、htmlやcssのコードも自力で組み立てて。

 

  上記のバナーの画像が示すごとく、なんともちゃちな作りのサイトでしたが、しだいにアクセスが増え、「特許 検索」のキーワードでヒットする情報群の中のトップページに出てくるようになりました。アクセス解析で、各ページを順に追って読んで下さっているらしい方や、繰り返し訪問して下さっている方がおられることもわかって、大変、嬉しくなり、別のブログでの発信も始めました。

 

 正直にいうと、最初のうちは若干の集客効果も期待したのですが、それは全く得られませんでした。

でも、それ以上の効果があったと、いまになって思います。

 

 第2弾として始めたブログでは、本当に純粋な創作意欲をもって記事を仕立てました。

 特許制度に関する入門記事のほか、ときに、自分の仕事に全く関係のない特許の内容を調べて、発明紹介記事をまとめたりもしました。多大な時間を費やしても一銭の儲けにもならないのに、とにかく楽しかったのです。

 そうこうしているうちに、実社会でも外に出て様々な分野の方にお目にかかるようになり、自分に見える景色が少しずつ変わってゆきました。

そして、

 「私にでもできることをしよう」という意識が、いつしか

 「私にしかできないことをしよう」という意識に変わり、

 いま、かつての自分が想像だにしなかったことに取り組んでいます。

 

 最初にこんな情報を発信しよう・・と決意したときのエネルギーが、引っ込み思案だった私に不思議な力を与えてくれたのかもしれません。 

 

 そのように思いおこしているうちに、改めて、いまの情報発信の姿勢に足りないものが見えてきました。

 

 現在の私は、この知財アシストのサイトからのみに絞って情報発信を行っています。

            少しでも多くの方に弊社の存在や特徴を知ってもらい、

              まだ出会えていない弊社のお客様に早く見つけてもらえるように・・・

 と考えてのことです。

  その目的に沿ってどんな記事を書くべきか悩んだり、私の要領(容量も)が悪いことが、このところの遅筆の原因だと思っていたのですが、それよりも、一番足りていなかったのは、

これ書きたい」という創作意欲かもしれません。

 日常生活や仕事の中で気づくこと、友人・知人との語らいなどを通じて「あっ、これだ」と感じることは今でも結構あるのに、それを文章表現に膨らませようという意識が薄れていたかもしれません。

 

 まずは書きたいと思うこと。そして「書く」を楽しむこと

 これなしに無理矢理になにか書いても、気の入った、人を惹き付けられる記事をまとめることはできないことでしょう。

 冒頭に述べたウェブサイトの制作作業のドタバタの中で助けてくれた数多くの解説記事サイトは、その作業に関して発生している課題を解決するという短絡的な目的にだけでなく、見失いかけていた創作意欲を少しばかり取り戻すことにも力を貸してくれたような気がしています。

 取り戻した創作意欲を保ち、いや膨らませ、本年(2018年)は、書くことを再び楽しみながら、ビジネス目線にこだわらない記事も含めて発信をしてゆきたいと思います。

 

駄文ではありますが、よろしければ今後もお付き合い下さいませ。

 

株式会社知財アシスト

 代表取締役 小石川 由紀乃 (弁理士) 


小石川由紀乃 プロフィール

 理系出身者が圧倒的多数を占める弁理士業界において、大学で神経生理学や心理学を専攻した後、百貨店の書籍部門での勤務などを経て知財の世界に足を踏み入れた少し変わり種の弁理士。

 特許事務所勤務の傍ら、独学に近い無手勝流の受験勉強を経て、2005年に弁理士試験に合格。当初は、与えられた仕事をするだけのひきこもりタイプの勤務弁理士であったが、あるとき意を決して、外部との交流や情報発信などの活動を始める。

 中小企業のクライアントが多い特許事務所に長く勤務して見聞きした実情をふまえ、自分なりにできることをしようと、2013年に知的財産に関する専門部署を持たない企業に向けた知財サービスを提供する事業所:知財サポートルームささら(現・ささら知財事務所)を開設。

 より充実したサービスの提供を目指して、2015年8月に株式会社知財アシストを設立し、代表取締役に就任。