馬に蹴られて待ち行列理論

 昔の数学理論が現在のビジネスに生きている例として、待ち行列理論があげられます。

 比較的ヒマなショップに今から1時間以内にお客が来る確率や、初めて走る地方の道路で、急にトイレに行きたくなった時に1km以内にパーキングが有る確率など、発生する確率が低く、かつそれが偶然に発生する事象は待ち行列理論として研究されています。

シメオン・ドニ・ポアソンの写真

「比較的ヒマなショップ」とか「初めて走る道路」と言っても、過去の実績から1時間の平均来客数や高速道路のパーキングやサービスエリアの平均的な間隔はわかっているとします。

このような「ある期間に平均してm回起こる現象が、ある期間にちょうどx回起きる確率」は、ポアソン分布として計算が可能であり、最新のビジネスにも生かされています。

 ちなみにポアソン分布は数学者であるシメオン・ドニ・ポアソン(左の写真)が1838年に発表したものですから、180年前の理論です。

 

 ある事象が起こる平均値をm、この事象がx回発生する確率をp(x)とすると、p(x)はポアソン分布として次式で求められます。ここでは自然対数の底、x!はxの階乗(1からxまでの範囲にある全ての整数の積)を表します。

 例えば高速道路200km当たり10か所のパーキングとサービスエリアが設けられているなら、現在の走行地点より1km以内にそれらが存在する確率はm=0.05、x=0、但し0!=1と定義されるので、上式より4.88%と求まります。

 最近はビジネス向けのSaaS(Software as a Service)が広がりつつありますが、有料のサービスでは365日、24時間のサポートを売り物にしています。深夜の問い合わせが平均的に1時間当たり5件として、それが7件になる確率は同じくポアソン分布の式で、m=5、x=7と置いて10.4%と求まります。

 この種の比較的頻度の低い顧客対応の人員配置にはポアソン分布による確率計算が有効です。

 最初にポアソン分布が実用的であると確認されたのは、プロイセン陸軍の騎兵連隊200部隊で、1875年から1894年の間に馬に蹴られて死亡した兵士の数を調べ、発生する確率がポアソン分布に近似していることを発見し、さらにこの先にどれぐらいの確率で馬に蹴られて兵士が死亡するか予測した例です。全く偶然に見える事象が、ポアソン分布により発生確率を予測できることを応用して、駅や銀行の窓口の人員配置や特定の交差点で発生する交通事故など社会的な対応やビジネスに生かされつつあります。

 ところで、数学公式やビジネスモデル自体は特許になりませんが、ビジネス手法に不可欠なICT技術の工夫は、特許される可能性があります。

 現在はインダストリー4.0、IoT、ディープラーニング、自動運転など数理統計処理とハードを組み合わせた新技術が目白押しですが、経営資源を掛けた技術は特許で守る必要があります。

 

 次回は難解なベイズ理論について書く予定です。

株式会社知財アシスト アドバイザーS


アドバイザーSのプロフィール

 学歴:  同志社大学大学院修士課程終了

 職歴: ㈱パナソニックにて機器開発と半導体

開発に従事

専門分野:アナログ電子回路開発、データ処理技術、

 技術英語

趣 味: 街歩き

本人の希望により匿名の投稿にしています。


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