ゆとり教育時代、小学校でπ(パイ)を3として計算するよう指導されていると聞いて唖然とした記憶がある。
実際には2002年度の小学校学習指導要領の改訂にともなって簡略計算ではπを3として求めさせただけであり、円周率は3.14であると教えていたとのことだ。
πは物理定数にも頻繁に登場する。
例えば真空の透磁率μ0は4πx10-7 H/mと定義されており、電磁波の速度を求めるのに必要な定数だ。
また標準正規分布(いわゆるガウス分布)の式は以下であり、品質管理、推計、検定の基礎となっている。

あるいは多くの研究者が美しい数式と呼ぶオイラーの等式は以下で表される。

円周率πは無理数で、小数点以下は無限に続くものであり、古代より多くの科学者により計算されてきた。
古代バビロニアではπには3+1/7が用いられて記録があるが、これは3.142857であり結構精度が良い。
手計算では1945年に出されたD.F.ファーガソンによる540桁が最高であり、その後はコンピュータの世界になる。
1950年代 1万桁、1973年 100万桁、1983年 1677万桁と記録は一気に伸び、10兆桁を初めて達成したのは嬉しいことに日本人である。
2013年に長野県の会社員である近藤さんがハードディスクを多数連結出来るように改造した自作パソコンで、94日かけて12.1兆桁まで求めた。最新報告ではPeter Trüb氏が2016年に22.4兆桁まで105日掛けて計算したものが最大桁数である。これらの計算は最新のスパコンで実行されたのではなく、市販のパソコンを自作で強化して実行されたものである。
πの計算はコンピュータの性能評価にも適しており、筆者が日常使用しているパソコン(下表①~④)で試してみた結果が以下である。ちなみに12年前に購入した当時はかなり高額であったノートパソコン(Let’s Note)を久しぶりに取り出し、測定した結果(下表⑤)も記載している。わずか10年ほどで価格やスペックで、計算速度でも技術の進展が見られる結果となった。

ところで、「3月14日は何の日?」と言うと、「ホワイトデー」と答える人が多そうだが、
3月14日は「円周率の日」でもある。
2009年には米国下院議会で、3月14日を「全米円周率の日(National Pi Day)」とする決議案が可決されている。

世界の多くの国でも、3月14日は「円周率(π)の日(Pi Day)」とされていて、数学科を持つ学校ではパーティーが催されて、πをもじったパイが焼かれて振る舞われることもあるそうだ。
洒落たところでは、生地を何度も折り返し、層を重ねて作るパイはバレンタインデーのお返しとしてのホワイトデーの贈り物にふさわしいという理由から、料理やお菓子の「パイの日」としているところもあるらしい。
株式会社知財アシスト
アドバイザーS
アドバイザーSのプロフィール
学歴: 同志社大学大学院修士課程終了
職歴: ㈱パナソニックにて機器開発と半導体
開発に従事
専門分野:アナログ電子回路開発、データ処理技術、
技術英語
趣 味: 街歩き