先日、私の主催する勉強会で、決断力に関する講演を聞きました。
講演の内容は、以下の通りです。
講師 高島徹氏(株式会社決断力代表)
表題 真田一族に学ぶ後悔しない決断の促し方
A.真田信繁(真田雪村)について
「非常に優秀な上級管理職」
(1) 戦いの全体像を把握していた(背景、意図)。
(2) 合理的思考を高いレベルで出来た。
(3) 意見を進言する胆力があった。
(4) 具体的戦術を立案することが出来た。
(5) 寄せ集め牢人衆を動かす統率力があった。
(6) 簡単に折れない、しなやかな精神力を持っていた。
(7) 最後まであきらめない粘りがあった。
(8) 組織に殉じる忠誠心があった。
この優秀な能力を活かして、数々の策を立て、決断し、実行し、
真田信繁(真田雪村)の武名が天下に轟くようになりました。
冬の陣のあと、真田信繁には家康から大名に取り立てるという誘いがありましたが、
信繁は二度もきっぱりと断ったそうです。
この潔い決断に多くの人が爽やかさを感じ、その結果、後世に名を残すことができたとのことです。
(実際、NHKの大河ドラマに取り上げられているのは周知の通りです。)
(各写真は浦野真弓様よりご提供いただきました。クリックまたはタップで拡大されます。)
B.私たちが学ぶべきこと
「後悔しない生き方」とは、自分の「価値観」に従った決断をすることです。
決断したことを、一貫性を持って行動することです。
成功パターンが見えない21世紀の私たちの「心のゆらぎ」をどうすれば良いのでしょうか。
ともすれば、自分のアイデンティティを見失いがちになります。
決断すべきことが、多すぎるのです。
決断のプロセスを学ぶことで、決断に迷いが無くなります。
変化に対応できる「心のしなやかさ」を保つ手法を手に入れることが大切なのでしょう。
この話の中で、私は、以下のようなことを感じました。
(ア) 現状分析→(イ) 戦略立案→(ウ) 決断→(エ) 実行
イノベーションには、このプロセスが大切です。
一見、当たり前のことを書いてありますが、なかなか出来ていないのが現状です。
例えば、新しい特許技術を持ち、新規事業を進めて行こうとする場合、
例えば、今までにない新製品を販売展開して行こうとする場合、
例えば、商品の販売量が減少し、方向転換しようか迷っている場合、
その他、あらゆるビジネスの場で、決断が必要な場面に使うことができます。
当然、ビジネス以外の場面でも、決断が必要な時には、このプロセスは有効です。
進学する時、就職する時、結婚する時、転職(独立)する時、家を買う時、家を引っ越す時、
大きな決断をする時には、このプロセスを踏むことで失敗する危険性を減らせます。
(ア) 現状分析
ビジネスを取り巻く環境に関する情報を収集し、現状について分析をします。
将来予測も重要です。
(イ) 戦略立案
今後、ビジネスをどう進めて行くか計画を練ります。
いくつかのビジネスプランを並べ、どのプランで行くか決定するのも有効な方法です。
戦略を立てて行くには、ビジネスモデルキャンバスが有効です。
ビジネスモデルキャンバスは、以下9つのブロックから構成されており、
ひとつひとつのブロックの中身を吟味して行けば、勝手に戦略が出来上がる便利なツールです。
1)顧客セグメント(CS:Customer Segment)
2)価値提案(VP:Value Proposition)
3)チャネル(CH:Channel)
4)顧客との関係(CR:Customer Relation)
5)収益の流れ(RS:Revenue Stream)
6)リソース(KR:Key Resource)
7)主要活動(KA:Key Activity)
8)パートナー(KP:Key Partner)
9)コスト構造(CS:Cost Structure)
(ウ) 決断
(ア) 現状分析と(イ) 戦略立案は、他人の力を借りることができます。
しかも、優秀なスタッフを抱えているほど、精度の高いものを完成させることができます。
しかし、(ウ) 決断は、自分自身が行わなければなりません。
そこに決断力が問われます。
(エ) 実行
決断したならば、後は実行です。
多くの中小企業に見られることは、 (ア) 現状分析と(イ) 戦略立案が不十分なまま、(ウ) 決断に進んでしまうことです。
理由は、 (ア) 現状分析と(イ) 戦略立案にお金と時間を掛ける余裕がないからです。
私は、ある中小企業から、その会社がやろうとしている新規事業の事業化の可能性分析を200万円で受けたことがありますが、そういうことができる企業は稀です。
しかし、決断までのプロセスが不十分であると、決断後の行動にも迷いが生じ、不慮の問題にもうまく対応できません。失敗したときの後悔も大きくなります。
大がかりなお金をかける余裕がないとしても、ある程度の費用をかけて外部からの知恵を仕入れながら(ア) 現状分析や(イ) 戦略立案の力を養ってゆくことが、決断力や成功の可能性を高めることにつながります。この重要性を意識して、できることから取り組むことが、中小企業にとっての一番の課題であるように思います。
一方、大企業は、(ア) 現状分析と(イ) 戦略立案が十分揃っているにも関わらず、
誰も責任を取りたくないので、誰も決断をしないという事例が多いようです。
シリコンバレーには3つのOKがあるという話です
OK TO CHANGE (変わっても良いよ)
OK TO CHAT (おしゃべりしても良いよ)
OK TO FAIL (失敗しても良いよ)
日本の大企業の多くは、「失敗しても良いよ。」とは言いません。
そのため、決断できないリーダーが多数生まれています。
「成功したら自分の手柄、失敗したら部下の責任。」なんて陰口をたたかれるほどです。
日本の産業活性化には、悪しき風習を是正するところから正す必要がありそうです。
松本 圭介 (株式会社知財アシストアドバイザー/有限会社エイエムアイ 代表取締役)
松本圭介のプロフィール
1955年大阪府泉大津市生まれ。現在、豊中市在住。
東京大学工学部卒業。東京大学工学系大学院修了。
約15年間の会社員時代に、機能性セラミック、強化プラスチック、液晶ディスプレイなどの技術開発・商品開発を手がけ、管理業務や営業業務も経験。
その後独立し、様々な技術開発、商品開発、マーケティング、ビジネスプラン構築、知財戦略に携わる。、幅広い技術的知識を持ち、ものづくり補助金申請書作成支援のスペシャリストでもある。
人脈も豊富で、月に一度、「未来工房」という名称の勉強会を主催している。
