サムソンの最新スマホ「ギャラクシーノート7」の発火問題が大きく取り上げられています。
当初はグループ会社のリチウムイオン電池の問題とされてきましたが、電池を交換しても発火は発生しており、セット側にも原因がある疑いが浮上し、結局サムソンはこの戦略商品の生産、販売を打ち切りました。
充電容量が大きいリチウムイオン電池は内部のセパレータの不具合や金属粉の混入、あるいは回路の短絡で発熱、発火を引き起こしますが、原因を特定できない事例も多いようです。2006年にはソニーのパソコン用電池が発火事故を発生しましたが、真の原因を特定できないままソニーが回収をしました。
スマホで世界占有率トップメーカの最新製品の打ち切りは各方面に影響を及ぼしていますが、唯一の救いは部品メーカに対して完成済だけでなく、仕掛り部品の費用も保証するとの発表です。
2007年に登場したスマホは2016年の世界市場が15億台と急成長し、3億台を切るパソコンを大きく引き離し、情報通信の主役となっています。参入メーカも多く、中国では400社以上のスマホメーカが商品を生産しています。高度の技術製品を中小メーカが短期間で商品化できているのはターンキービジネスに拠るところが大きいのですが、ターンキーについては後日述べることにします。
ところで、日本におけるスマホの2016年6月における普及率を世代別にまとめたデータが博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所より発表されています(「(株)博報堂DYメディアパートナーズ 「メディア定点調査・2016時系列分析 ~メディア環境の10年変化~」http://www.media-kankyo.jp/wordpress/wp-content/uploads/HDYmpnews20160620.pdf)。これを表形式にまとめてみました。

想像通り、若者の保有率が高く、60歳以上ではまだガラケーを使っている人が多いのがよくわかるデータです。これは退職すると、家の外で頻繁にネットを見る必要性が低く、また使用料の負担が理由と思われます。
そのガラケーも11月2日にドコモは年内に出荷を終了すると発表し、いよいよスマホだけの世界に入ります。
数理統計学で扱うデータはアナログデータが主ですが、「スマホを持っているか、持っていないか」というような「Yes or No」のデータも時に扱います。この分析に適した手法がロジスティック回帰分析です。
ロジスティック回帰分析では、ある事象の発生確率をpとするとき、まずオッズodds(その事象が発生する確率pとその事象が発生しない確率(1-p)との比率)を計算します。

その対数を取った次式を対数オッズ、またはロジットと呼び、それを線形式α+βxとして確率pと変数xとの関係式を求めると次式が求まります。
したがって、次式によりpの値が求まります。
このように、説明変数xに対して確率pは0から1の範囲に収束するので、Yes or Noのような結果を表現するのに適します。
この数式の解法、つまりαとβの算出は、特別なソフトを用いるか、Excelのソルバーのような機能を使えば短時間で求められます。
これにより、変数xに対する確率pは0~1までの値で求まり、グラフ化できます。
たとえば、年齢別のスマホ保有率を調べようと、持っているか(Yes)、持っていないか(No)を問うアンケートをしてその答えを分析する場合、スマホを持っている確率をpとし、年齢を変数xとして、上記の関係式にあてはめます。
右(または下)のグラフは、15歳から85歳までの74名に,街頭でスマホを使っているか、いないかを尋ねた結果を、「使っている」を1,「使っていない」を0として、青のドットによりプロットして示したもの(ただし架空のデータ)です。
この調査結果からロジスティック回帰解析を実施するとα=4.68、β=-0.082と求まり、近似曲線を引くと赤の曲線が得られます。例では保有率が50%を切るのは57歳前後と求まります。
ロジスティック回帰解析は、例えば喫煙開始年齢と肺がん罹患率、ある資格試験についての勉強時間と合格率、営業マンの顧客への電話回数と受注率などの分析にも活用できます。
また経営意思決定やリスク管理などにも幅広く応用可能です。
株式会社知財アシスト アドバイザーS

アドバイザーSのプロフィール
学歴: 同志社大学大学院修士課程終了
職歴: ㈱パナソニックにて機器開発と半導体
開発に従事
専門分野:アナログ電子回路開発、データ処理技術、
技術英語
趣 味: 街歩き
本人の希望で匿名の投稿にしています。