2016年3月、人工知能AlphaGoが囲碁の世界トップ棋士に4勝1敗で勝ち越しました。
指し手の組み合わせが将棋よりはるかに膨大な囲碁で、プロ棋士に対抗できるのは2030年以降とみられていたので、AI(人工知能)の進歩の速さは脅威と考えられます。
ICTの世界では日々、技術革新が進んでいますが、意外にずいぶん昔に考案された数学理論が生かされていることに気付きます。
パレートの法則、ポアソン分布、ベイズ理論などが代表的でしょう。
もっとも有名なパレートの法則は、イタリアの経済学者パレートが1897年に提唱したものです。

経済において、全体の数値の大部分は全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという理論で、80:20の法則や働き蟻の法則とも呼ばれます。
例えば、ビジネスにおいて、
・商品の売上の8割は、全商品のうちの売れ筋の2割で生み出している、
・売上の8割は全顧客の2割が生み出している、
・よって売上を伸ばすには顧客全員を対象としたサービスを行うよりも、2割の顧客に的を絞ったサービスを行う方が効率的である.・・・
というもので、実感とも合います。
この法則の逆手を取ったのがAMAZONのビジネスモデルです。
販売機会の少ない死に筋の商品でも幅広く取り揃え、ネットと宅配システムを活用して顧客の総数を増やすことで売上げを大きくするもので、ロングテールとして新しいビジネスモデルを創造しました。

数学的には横軸をモデル数、縦軸に販売数を取ると指数関数になるというものですが、販売確率(青線)が1%、累積販売比率(赤線)が99%となる点までのモデル比率を100%として計算すると、左のグラフに示すように、売り上げ80%となる商品は全体の約35%です。
また、このグラフによると、上位20%までの商品の累積販売比率は60%であり、下位80%のモデルにまだ40%のマーケットが残っていることになります。
最初の働き蟻の法則の話に戻ると、今年の2月にイギリスの科学誌に発表された北海道大学の研究チームの1200匹の蟻の観測から、
「蟻の集団が長期間存続するためには、働かない蟻が存在する必要がある」
という結果が得られたようです。
一見無駄な働かない蟻も、
「働き蟻が疲労した時の交代要員であり、集団の長期的存続には欠かせない。
人間も含め、短期的効率を求めすぎると、組織が大きなダメージを受けることがある。」
ということらしいです。
ところで、次回以降に述べるポアソン分布、ベイズ理論、予測理論などを駆使した最新のビジネスモデルは特許になるかという問題が有ります。
日本国の特許法第2条では、
「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」
とされていますので、数学公式やアルゴリズムは特許にはならないと解釈されます。
国によっても解釈は異なるようで、米国ではAMAZONのビジネスモデルである予測配達の特許が2012年8月に出願され、登録されました。(米国特許第8615473号(Method and system for anticipatory package shipping) )

ビジネスモデルの発明について日本で特許を受けるには、「ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって実現されている必要がある」ことが、大手の特許事務所から紹介されています。
この数学理論のビジネスへの応用は次回も書いてみたいと思います。
㈱知財アシスト アドバイザーS記

本人の希望により匿名での投稿にしています。
アドバイザーSのプロフィール
学歴: 同志社大学大学院修士課程終了
職歴: ㈱パナソニックにて機器開発と半導体
開発に従事
専門分野:アナログ電子回路開発、データ処理技術、
技術英語
趣 味: 街歩き