知財アシストのメンバーの一員になり、優秀な技術者の中で、事務屋の自分に何が出来るか、少し悩みつつ動いてきた。

近年、「オープン・イノベーション」という言葉と施策が提唱され、日本でも、大阪ガスなどの先行事例が紹介されている。
筆者は、この概念が良く理解できず、セミナーなどで勉強をしてきたが、残念ながら、未だもって、自信のある理解には至っていない。
これは、多分、小生の活動が中小企業支援を中心にしていることに起因していると思われる。
なぜ、日本を代表するあるいは、欧米の世界的な企業がその技術的なソースを外部に求めざるを得ないのか?
それは、1企業の研究投資額に限界が出て来ているためなのか?
そのアウト・ソーシングは、中小企業に求めうるものなのか?
中小企業に求めた際に、大企業側の倫理観、道徳観は維持されるのであろうか?
そんなことをを思いつつ、
イノベーションについての書籍を捜しに図書館に行った。
そこでたまたま「小さなイノベーション」という特集を組んだ雑誌に出会った。
その雑誌の中の1論文「集団で考えると正しい答えは導かれるのか」
に組織・集団が必ずしもイノベーションを促進するモノではないという主張が載っていた。
一部、引用したい。
人類の歴史が始まってから現在まで、人は集団で意思決定をしてきた。「三人寄れば文殊の知恵」ということわざもある。それが正しければ、三人より四人、四人より五人で考えるほうがさらによい知恵が生まれるはずだ。
100人もしくは1000人で考えれば、物事はうまく運ぶに決まっている。こうして「群衆の叡智」が存在するという仮説が生まれた。
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「判断ミスが生まれる二つの理由」
集団が判断を間違える主な理由は二つある。一つ目は「情報シグナル」に関する問題だ。
人々がお互い相手から学び合うのは、極めて自然なことだが、集団の一部が他のメンバーからのシグナルを間違って読み取ると、集団として間違った方向に向かってしまうことが多い。
二つ目は「評判プレッシャー」だ。これは、自分が不利益を被るのを避けるために口をつぐんだり、自分の意見を変えてしまうことだ。
不利益といっても、たいていは他人から反対される程度のことだ。とはいえ、その他人が何かしらの権威だったり、権力を持っていたりする場合、その人から反対されたことで個人の評判が大きく傷つきかねない。
情報シグナルおよび評判プレッシャーは、結果的に次の四つの問題のいずれかを集団にもたらす。この四つは別個ながら互いに関連している。集団が判断ミスや自己破壊的な決定をする時は通常、この四つの問題のうち一つまたは複数が原因となっている。
①集団は、所属メンバーの間違いを修正できないどころか、その間違いを増幅する。
②最初に誰かが言い出したこと、またはやり出したことに他のメンバーが追随することで、集団はカスケード効果(小さなことが積み重なって大きな影響を与えること)の餌食となる。
③集団は両極化する。メンバーは集団討議によって、討議前の立場よりもいっそう 極端な立場を取るようになる。
④集団は、皆がすでに知っていることを重視する。したがって、一人または少数だけが知る決定的に重要な情報は考慮されない。
出典
Harvard Business Review 2015年6月号
一人ひとりの知恵を活かす6つの方法「いま明かされる集団思考のメカニズム」
p.13-p.15 「集団で考えると正しい答えは導かれるのか」
ハーバード大学ロースクール教授 キャス・サンスティーン Cass R. Sunstein
シカゴ大学ブース・ビジネススクール教授 リード・ヘイスティ Reid Hastie
倉田幸信/訳
筆者は、このような問題が生まれるのは、組織運営、管理の悪さに起因するという理解をしてきたが、本質的には、人間はその様な傾向を持つモノらしいということに気付き始めた。

そんなことを思いつつ、何気なくNHKの番組「さきどり」で、「ひとりメーカー」という特集を見ていた。
その中で取り扱われていたのは、個人のインスピレーション、高い感度をベースにした「ものづくり」だった。
しかし、このような中で扱われる技術は、B to BというよりもB to Cに近い、俗に言うB to B to Cのモノが多い。
それでは、もっと先端的な技術を要する分野では、技術マッチングのようなもの、イノベーションの様なものは、必要ないのであろうか?
次回は、この点を企業内における能力開発、人事管理面から見てみたい。
株式会社知財アシスト アドバイザー 米谷 政勝

米谷政勝のプロフィール
一橋大学商学部卒。
大手プラントメーカーで発電プラント輸出営業ほか、国内外のプラント事業に従事。特に海外において、資材調達、輸送計画、契約などの経験を積み、技術に関する見識も豊富。
役職者としてのキャリアも長く、幅広い人脈を持つ。
現在は、中小企業のサポーターとして。海外事業展開支援を中心に、様々な事業活動をアシストしている。
専門分野:機器輸出入、海外契約、海外調達、経営計画