ものづくり補助金を取り巻く世界

 3年前から、ものづくり補助金という制度が始まりました。

 

 「ものづくり補助金(通称)」という名の補助金が突然現れたのが、平成25年の2月です。

 平成24年度の補正予算から、補助金の予算が出されました。

それ以降、「平成××年度補正」という冠が付き、翌年の2月に1次公募の募集が始まります。

 

 平成24年度補正ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金:平成25年2月公募開始

 平成25年度補正中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業:平成26年2月公募開始

 平成26年度補正ものづくり・商業・サービス革新補助金:平成27年2月公募開始

 平成27年度補正ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金:平成28年2月公募開始

 

 毎年、補助金の名称と中身が多少異なりますが、

 中心は、設備投資や試作開発に対して、2/3を補助する(上限:1000万円)というものです

 

   この補助金が発表されてから、日本の中小企業は活気づきました。

 それまでの経済産業省の施策は、大企業と一部の研究開発型企業を対象としたものに限られていたからです。

 採択数は以下の通りです。

  申請数(件) 採択数(件) 採択率(%)
 平成24年度補正 1次募集1次締切 1,836 742 40.4
 平成24年度補正 1次募集2次締切 10,209 4,162 40.8
 平成24年度補正 2次募集 11,926 5,612 47.1
 平成25年度補正 1次募集1次締切 7,396 2,916 39.4
 平成25年度補正 1次募集2次締切 15,019 6,697 44.6
 平成25年度補正 2次募集 14,502 4,816 33.2
 平成26年度補正 1次募集 17,128 7,253 42.3
 平成26年度補正 2次募集 13,350 5,881 44.1
 平成27年度補正 1次募集 24,011 7,729 33.2
 平成27年度補正 2次募集 本年10月発表予定 本年10月発表予定 本年10月発表予定

 

ものづくり補助金申請書は、以下のような手順で書く必要があります。

a.会社概要(当社はどういう会社か?)

b.どういう新しい取り組みにチャレンジしようとしているか

c.この取り組みにはどのような新規性・独創性があるか

d.この取り組みの体制は万全か

e.この取り組みのスケジュールはどのようなもので妥当性はあるか

f.この取り組みの先にある市場規模・市場成長性・顧客は明確か

g.しっかりとした売上計画・利益計画は期待できるか

h.当社はこの取り組みによって成長するか

 

 しかしながら、これをちゃんと申請書に盛り込めば必ず採択されるというわけではありません。

それは、上に書いた採択率を見ても一目瞭然です。

 当然、この取り組みの価値が高いかどうかが評価されます。

 審査項目は以下の通りです(平成27年度補正ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金2次公募要領より抜粋)。

 

技術面

(1) 新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイディアの活用等を含む))の革新的な開発となっているか。

(2) サービス・試作品等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。

 (3) 課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか。

 (4) 補助事業実施のための体制及び技術的能力が備わっているか。

 

事業化面

 (1) 事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。

 (2) 事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。

(3) 補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か。

(4) 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して想定される売上・収益の規模、その実現性等)が高いか

 

政策面

 (1)厳しい内外環境の中にあって新たな活路を見いだす企業として、他の企業のモデルとなるとともに、国の方針(「経済の好循環実現に向けた政労使の取組について」において示された賃金上昇に資する取組みであるか等)と整合性を持ち、地域経済と雇用の支援につながることが期待できる計画であるか。

(2) 金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。

(3) 中小企業・小規模事業者の競争力強化につながる経営資源の蓄積(例えば、生産設備の改修・増強による能力強化)につながるものであるか。

 

加点項目

(1) 賃上げ等に取り組む企業

(2)本事業によりTPP加盟国等への海外展開により海外市場の新たな獲得を目指す企業

(3) 応募申請時に有効な経営革新計画の承認を受けている(申請中を含む)企業

(4) 有効な経営力向上計画の認定を受けている企業

(5) 小規模型に応募する小規模企業者

 

要するに、これらを満たして高得点を上げれば採択され、補助金が頂けるという仕組みです。

それじゃ、どのような申請書ならば採択されるのでしょう?

 

私は常々、ものづくり補助金申請をして採択されるためには以下の3つが必要だと言っています。

A.新規性 (新規性・独創性・革新的な要素が高ければ高いほど良いです。)

B.実現性 (利益剰余金がないとか、社員が5名以下では難しいです。)

C.売上性 (3年後に2、3千万円以上の売上に結び付く可能性が高いかどうかです。)

 

 3つともある程度の基準を満たしていれば、採択される可能性は高いと思われます。

 3つとも低い場合は、採択は難しくなります。

 A、B、Cのどれかがゼロだと、採択される可能性はかなり少ないです。

しかし、採択される可能性が多かれ少なかれあったとしても、

これを申請書にしっかりとわかりやすく書かないと採択されません。

恐らく、多くの企業はプロを使って書かせています。

そういった現状に対して、我流で申請書を書いていても、

一部の優秀な書き手がいる企業は別として、一般の企業ではほとんど通る可能性はありません。

 

初めて公募が行われた平成25年は、しっかりとわかりやすく書けば、結構な確率で採択されました。

多くの企業が我流で書いていたからです。

文章力がないと採点者から見て意味不明の独りよがりな文章になります。

採点者から言えば、「何となく言いたいことはわかるのだけど、

この文章で高得点を与えるわけにはいかないな・・・」という感じです。

 

それと、企業規模、企業の経営状況が高く評価された傾向があるように思います。

採択する側が、とんでもない企業を採択してしまうという失敗は許されないと感じたのでしょう。

ある程度の規模を持ち、経営的にも安定した企業が多く採択されたように感じます。

ある種、採択する側のリスク管理です。

 

 平成26年は、かなり多くの書き屋さんが出て来ました。

 その結果、優秀な書き屋さんに頼んだ企業は採択されましたが、

 書き屋さんに頼まなかった企業の多くは不採択になったようです。

 自社に文書作成能力に長けた人を抱えている企業は別としての話です。

 

 平成27年も平成26年と同様の傾向がありました。

 優秀な書き屋さんが続々現れ、そういった書き屋さんに頼んだ企業は採択されました。

 ただ、3年目ともなると、採択する側も勝手がわかってきたのか、

 小規模事業者の採択率が上がって来たように感じます。

 初年度、従業員数15人以下の企業は採択されるのが難しいとの噂が流れましたが、

 この年から、従業員数が数人の企業の採択率が上昇したように思います。

 

しかし、平成28年は更に進化したのです。

A.新規性(新規性・独創性・革新的な要素が高ければ高いほど良いです。)が重視されました。

B.実現性、C.売上性のレベルが上がって来たのだと考えます。

 

 B.実現性、C.売上性がどちらも高得点で差が出ないとなれば、

 A.新規性が勝負の分かれ目となります。

 

 試作開発の場合、高度な技術レベルで、これからの社会にどれだけ貢献できるかがカギになります。

 設備投資の場合は、最新の技術を駆使した装置を導入し、

 これからの未来に発展すると思われる産業にどれだけ貢献できるかがカギになりそうです。

 

 平成28年度補正ものづくり補助金は、どういう名称の補助金になるかはわかりませんが、

 従来、年明けの2月から公募が始まっていたのが、今回は前倒しになり、

 本年中、恐らく11月ごろに公募が開始される見込みです。

 

平成28年度補正ものづくり補助金に申請をお考えの企業は、

そろそろ準備を始めたほうが良いと思います。

 

そして、平成28年度補正ものづくり補助金に採択されるためには、

更なる新規性・独創性・革新的な要素が求められそうです。

 

高いレベルの新規性・独創性・革新性のある案件を進めるためには、

特許申請などの方法でその企業の知的財産を守る必要があります。

 

そこを疎かに考えると、平成28年度補正ものづくり補助金にたとえ採択されたとしても、

その企業の発展には結びつかない危険性もあると考えます。

 

松本圭介(株式会社知財アシストアドバイザー/有限会社エイエムアイ代表取締役)

松本圭介のプロフィール

1955年大阪府泉大津市生まれ。現在、豊中市在住。
  東京大学工学部卒業。東京大学工学系大学院修了。
  約15年間の会社員時代に、機能性セラミック、強化プラスチック、液晶ディスプレイなどの技術開発・商品開発を手がけ、管理業務や営業業務も経験。
  その後独立し、様々な技術開発、商品開発、マーケティング、ビジネスプラン構築、知財戦略に携わる。、幅広い技術的知識を持ち、ものづくり補助金申請書作成支援のスペシャリストでもある。
    人脈も豊富で、月に一度、「未来工房」という名称の勉強会を主催している。



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